- か細い月さえも雲に隠れ、辺りはただ静けさのみが支配していた。
余程夜目が効くのだろうか、その闇の中確かな足取りで先を急ぐ人影があった。
「シルバーポイズンだな。」
その背を、深く、闇に沈む声が追う。
男の歩みがピタリと止まった。
一体、これ程までの接近を許すとは…。
先日斬ったパーティーに雇われた刺客だろうか。
或いは同業者がウチの縄張りを狙ってきたのか。
それとも上納金を納めるのが嫌になったGODメンバーの反乱か。
シルバーポイズンは内心での舌打ちを隠し、背後を振り返りもせずに言った。
「何か用か、先を急ぐのだが。」
闇の中から再び声がした。
「時間は取らせない、1、2分で済む。お前が抵抗しなければの話だが…。」
「見くびられたものだな…大人しく斬られるとでも思っているのか!?」
シルバーポイズンはそう叫ぶと同時に大きく前方へ飛び、振り向きざまに
影に向かって火炎弾を放った。
轟々と音を立てて赤い尾を引いた炎が飛び交い、辺りの闇を照らし出す。
しかしその光の収束する先に、声の主の姿はなかった。
- 「噂とは当てにならないものだな。冷静な策士…それ以上に好戦的だ。」
クククッ、と先程とは別な方角から笑い声がする。その忍び笑いが勘に触る。
「貴様…血祭りにされたいか。」
「それは勘弁願いたいな。」
その言葉と共に現れた姿を認めて、シルバーポイズンは呆れた様に言った。
「何だ、お前か…。」
そこに立っていたのは妻るーちょのPM、ザク改だった。
「趣味が悪いぞ、お前。」
「先走ったのは、お前だ。」
そう言って、また笑い声を漏らすザク改。
先程までとは明らかに違う、普段通りの声。オプションで変声機まで
備えているのか、この男は。
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