アストローナ文献集

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名称
アストローナ・サーガ2巻
発見場所
16-267
「おお、苛!妾の愛するもの全てを滅ぼせる、おぞましき暗殺者!」
苛の耳がずきずきと痛むほどの大音響である。苛はよろよろと後ずさりして
胸壁に背をもたせかけ、その場に釘付けになって、目をみはった。
「倉臼よ!そなたは潤の掟をあなどられた!」
反対側の地平線に倉臼と同じように巨大な鞘無神が立っていた。
「そなたは潤をあざけったのだ、倉臼」
「妾が初めてではあるまい!」
「生きのびた者は一人しかおらず、その者は無名の勢力でしかない!
そなたは自分の領域を統治する権利を放棄したのだ!」
「ちがう!潤には妾を支配する力はない!」
「ところが、あるのだ・・・・」
そして、苛が亡帝を追放したときに幻覚の中で見た潤が鞘無と倉臼との
間の空に出現した。二神が小さく見えるほど潤は大きかった。
「あるのだ」
倉臼でも鞘無でもない者の声が言った。そして潤は鞘無のほうへとかしぎ始めた。
「あるのだ」
倉臼は恐れて悲鳴をあげた。全世界を震わせ、太陽をまわる軌道から
はじき飛ばさんばかりの悲鳴である。
「あるのだ」
「やめよ!」と倉臼は懇願した。
「これは罠じゃ 鞘無のたくらみじゃ。鞘無が妾をおびきよせたのじゃ。
鞘無は知っておった・・・」
倉臼の声は次第に小さくなっていった。
「知っておった・・・知っておった・・・・」
そして倉臼の実体が分散し始め、しばらくの間、数条の雲のように
漂っていたが、やがて消えてしまった。
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